
金沢の夜。二十数年ぶりに林先輩と再会した。
小中学校、そしてバイト時代を共に過ごした先輩だ。グラスを傾け、言葉を交わすと、時間は一気に巻き戻される。気づけば肩の力が抜け、若き日の空気に包まれていた。
現在の林先輩は写真や映像の世界で活躍している。同じ業界に身を置いたこともあり、語る言葉は尽きない。二軒目を探して金沢の街を歩く。

夜風が心地よく、どこへ向かうでもない散歩が妙に贅沢に思えた。その無目的さは、十九、二十歳の頃にあたり前のように過ごしていた“無駄な時間”を思い出させる。今振り返れば、あの無駄こそが私を育てていたのだ。忘れかけていた自分の姿がふっと立ち上がり、胸の奥を震わせた。


富山・砺波での三郎丸蒸留所の見学とトークセッションを終え、I-OPEN CENTRALの仲間とのネットワーキングを経て金沢に移動してきたこの夜。偶然のようで必然のような再会が、私の心に火をつけた。あの頃の体力や情熱がもう一度欲しい。いや、五十歳からの人生を生き直すために、あの熱を呼び覚ましたい。



歳は重ねても、人の中身はそう簡単には変わらない。幸福を求める欲は消えないし、ここまで来たら、もっと欲張っていい。まだ叶えていない夢を追いかけたい。
金沢の夜はただ楽しいだけでなく、私に未来を生きる覚悟を思い出させてくれた。創造すること、仲間と語り合うこと、そして無駄に見える時間の中にこそ人生の宝が眠っている。
そんな当たり前の真実を、私は改めて胸に刻んだ。

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