夜半過ぎから降り続く雨が止み、東の空からは次の日の始まりを告げる日差しが遠くの山の間から顔を見せる。
辺り一面に派生する朝露に濡れた稲穂に、黄金の矢を放つ朝日が差し込んで来る。
何があっても次の日はやってくる。
8月の強い日差しが水田に反射して目に飛び込んでくる。
新鮮な朝の空気を吸いながら、新しい朝の日差しを浴びて歩いていると、なんとなく苦労続きの自分の人生も少しだけ開けてくるような気持ちになってくる。
「なんとかなるかもしれない。」「とにかく何があっても諦めずに続けよう」
デザイナーとしての就職活動が上手くいかずに、連敗続きだった30歳の頃、一時帰省した時に見た近所の田圃に指してくる朝日を見た時に思ったことだ。
あれが16年前のことになる。
デザイナーになって、いつかは独立したい。現実を見た時、そんな夢のようなことが起こるはずもなかった。
東京ではデザイナーになるどころか、30歳になっても居酒屋のチェーン店でビールのジョッキを運ぶアルバイトだった。人生は詰んでいたと言ってもいい。その時の自分は周りの人にどう思われていたのか?
現実を受け入れられずに、夢ばかり語る痛いおっさん。きっとそうだ、それが正しい。
人生はドラマや映画のようにはいかない。そんなに甘くない。
それでもなお、それらの逆境をひっくり返して、なんとか成り立たせていくのが自分の選んだ人生だ。
稲石から君へ
何かを手に入れるには、何かを犠牲にしなくてはいけない。
私にとって、デザイナーになって夢を叶えることは、他の物を犠牲にする価値があったと思う。
なれるかなれないかで悩む前に、一歩踏み出したい。
強い意志を持つこと、モチベーションを高い位置で維持すること、
人に何を言われても「自分だけは信じてあげること」。
ただ、人生は長いから、人生全体を通してこれからは帳尻を合わせていきたい。
幸せという北極星を目指して、
トキガラデザインは、6期目の新しい航海をスタートする。
迷いの夜が、明ける。
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